造血薬
病態
造血作用の低下に伴う貧血の種類として鉄欠乏性貧血、慢性出血、萎黄病、妊娠、巨赤芽球性貧血、鉄芽球性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血が挙げられる 貧血といってもこのように様々な原因にもとづく病態があり、それぞれに適した薬剤がある 造血薬として汎用されるものは鉄剤、ビタミンB6、B12、葉酸(ナイアシン)(ビタミンの項を参照) またステロイドも(副腎皮質ステロイドの項を参照)再生不良性貧血に対してその赤血球産生促進作用からその効果を発現する
貧血に関わる検査値(単位は検査機関によって異なります)
正常値(男性) | 正常値(女性) | 数値が高い場合 | 数値が低い場合 | |
赤血球数RBC | 427〜570万個/o3 | 376〜500万個/o3 | 真性多血症 | 鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血 |
ヘモグロビン量(Hb) | 13.5〜17.6g/dL | 11.3〜15.2g/dL | 鉄欠乏性貧血、慢性出血性貧血 | |
ヘマトクリット(Ht) | 39.8〜51.8% | 33.4〜44.9% | ||
MCV(RBCとHtより算出)、 MCHC(HbとHtより算出) MCH(RBCとHbより算出) |
MCV、MCHがともに高い 悪性貧血など |
MCV、MCHCがともに低い 鉄欠乏性貧血など | ||
網状赤血球 | 2〜27% | 貧血の回復期、溶血性貧血など | 再生不良性貧血など | |
白血球数(WBC) | 3500〜9000個/mm3 | 再生不良性貧血 | ||
血小板数 | 13万〜37万個/mm3 | 再生不良性貧血 |
鉄剤
鉄欠乏性貧血や、慢性出血、萎黄病、妊娠に用いる、薬剤としては除放性鉄剤と有機鉄剤に分けられる 除放性鉄剤には硫酸鉄水和物である商品名:フェロ・グラデュメット、有機酸鉄にはクエン酸第一鉄ナトリウムである商品名:フェロミアが代表的である いずれも鉄欠乏性貧血に対しての適応を持つが、持たないものに対しては禁忌である 経口鉄剤は消化器系に影響し、悪心、嘔吐、腹痛、腹部不快感、下痢、便秘などをもたらすことがあるので そのSide effectsがひどい場合には鉄剤本体に影響を及ぼさない胃薬(健胃消化薬の項を参照)を追加処方する必要がある
注射用鉄剤
いずれも鉄欠乏性貧血が適応であるが経口投与が困難な場合また消化器に何らかの疾患が存在し鉄の腸管からの吸収が期待できない場合、血液中に直接補充される注射薬を使用する 一日の投与量は例えば汎用薬である含糖酸化鉄の商品名:フェジンの場合成人1日40r〜120r(2〜6ml) 小児 1日1歳10r 3歳13r12歳27rという投与量が決められているが過剰な投与は脳や大腸にダメージを与える可能性があり それらを考慮し緩やかに静脈注射することが必要である 注射用鉄剤を使用する場合には注射直後のSide effectsとしての頭痛、悪心、嘔吐、筋肉痛、関接痛、アナフィラキシーショックなどに留意する
ビタミン
ビタミンB12は悪性貧血に著効を示す 投与経路は注射にて行う
ビタミンB6 鉄芽球性貧血、ピリドキシン反応性貧血の治療に用いる
葉酸 葉酸自体の欠乏は大球性貧血、巨赤芽球性貧血、を引き起こす また妊娠時における大球性貧血には葉酸の投与がFirst choiseである
(ビタミンの項も参照)
エルスロポエチンEPO:erythropoietin
EPOは腎臓において産生され分泌される赤血球の産生を促す腎性貧血、未熟児貧血、自己血貯血に対する効果も認められている腎機能低下から透析治療に移行し、貧血症状が認められた場合の治療に用いられる 正式に透析施行中の腎性貧血に対する適応を持つ 具体的な薬剤としては、エポエチンアルファ商品名:エスポーやエポエチンベータ商品名:エポジンなどがある また最新のEPO製剤としてダルベポエチンアルファ 2007年6月収載 商品名:ネスプがあり 週一回の投与で効果を維持するという特性を持つ
G-CSF
フィルグラスチム 商品名:グラン レノグラスチム 商品名:ノイトロジン ナルトグラスチム商品名:ノイアップがある これらの薬剤は顆粒球コロニー因子G−CSF;granulocyte
colony-stimulating factorと呼ばれ作用機序は好中球の減少に用いられる これらは効果は同じだが適応に差がある
M-CSF
ミリモスチム 商品名:ロイコプロールのみ あまり汎用されることはない
免疫グロブリン
抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン 商品名リンフォグロブリンや抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン 商品名ゼットブリンがある適応はいずれも重症・中等度の再生不良性貧血である
結核菌製剤
抗結核菌熱水抽出物 商品名:アンサー20 適応は放射線療法時の白血球減少症である 使用されることは稀
以下に上述した薬剤と適応となる貧血の疾患をまとめる
貧血の種類別の使用薬剤
貧血の種類 | 使用薬剤 |
鉄欠乏性貧血、慢性貧血、萎黄病、妊娠 巨赤芽球性貧血 鉄芽球性貧血 溶血性貧血 再生不良性貧血 腎性貧血 |
鉄剤 ビタミンB12、葉酸(悪心貧血を除く) ビタミンB6 ステロイド、免疫抑制薬、葉酸 免疫抑制療法、蛋白同化ステロイド、サイトカイン エリスロポエチン |
以下各薬剤添付文書