制吐剤・鎮暈薬
病態
嘔吐は延髄の網様態によって また化学受容器引き金体である chemoreceptor trigger zone(CTZ)によって起こる
CTZは第4脳室底部に位置するが ジギタリス製剤(適応:心不全など)などの各種薬剤はこの部分を刺激する CTZが受けた刺激は嘔吐中枢に伝達され
結果嘔吐が起こる CTZにおけるreceptorは大きく分けて2種類であり
嘔吐を引き起こす原因となる物質は ヒスタミン受容体のサブタイプである5−HT3受容体(抗ヒスタミン薬の項を参照)を刺激するか もしくは D2受容体
(パーキンソン病治療薬の項を参照)を刺激し嘔吐症状を引き起こす つまりセロトニンやドパミンによる刺激がその症状を誘発する
ジギタリスの他にはアポモルフィン(パーキンソン病治療薬)も嘔吐を引き起こす原因薬物となり得る
嘔吐は 呼吸器症状(肺炎、肺梗塞など)や循環器疾患(急性心筋梗塞、大動脈瘤破裂)、
消化器系疾患(胃不全麻痺、腸閉塞症、腸内感染症)、代謝・内分泌系疾患(腎不全、肝不全、糖尿病など)、心因性疾患(神経性食欲不振など)、
乗り物酔いなどの疾患に随伴して見られる
めまいは浮動感、意識喪失感、回転性めまいに分けられる さらに浮動感の原因は不安、うつ病、パニック障害などによることが多く、
意識喪失感は血圧の低下起立性低血圧、不整脈、貧血などを原因とする脳血液の一過性の不足によるものである
回転性めまいは良性発作性めまいメニエル病によるもの、前庭神経炎、といった末梢性障害と小脳・脳幹出血などによって引き起こされる
治療薬
制吐剤;作用点の違いから 大きく分けて中枢性、末梢性、中枢・末梢性の3種に大別される 中枢性の治療薬は「病態」で述べた嘔吐中枢やCTZ
Chemoreceptor trigger zoneをの刺激をブロックするが フェノチアジン系薬剤や、抗ヒスタミン薬がその働きを持つ フェノチアジン系の薬剤としては ペルフェナジン商品名:PZC、プロクロルペラジン商品名:ノバミン、クロルプロマジン 商品名:コントミン、ウィンタミンなどプロメタジン商品名ヒベルナ、ピレチアがあり そのD2−blocker作用(これらの薬剤は抗精神病薬として用いられる;抗精神病薬の項を参照)によってChemoreceptor
trigger zoneを抑制、結果嘔吐を抑制するこれらの薬剤のSide effectsは抗精神病薬に一般的に見られ悪性症候群、錐体外路症状、血圧の低下、口渇、頻脈など 中枢性の作用をもつ抗ヒスタミン薬としてはドラマミン、トラベルミンが挙げられ内耳迷路、嘔吐中枢に選択的に作用する 乗り物用意や メニエル症候群に使用されるSide
effectsは 抗ヒスタミン薬特有の眠気、頭重感、全身倦怠感がある
以上の薬剤は 他の薬剤との併用に際して中枢神経抑制薬や MAO:monoamine oxidase(カテコラミン系物質の代謝酵素阻)害薬が主薬剤の作用を増強する事を
念頭に置いておくことが必要である
末梢性制吐薬は中枢性が脳に作用するのに対し消化管などの臓器に作用して嘔吐を抑える 代表薬は胃粘膜の知覚を麻痺させて反射性の嘔吐を抑えるストロカインや胃腸機能を促進する自律神経系の副交感神経を抑制するアトロピン、ブスコパン、コリオパンがある 副交感神経系作動薬は嘔吐を抑制する作用において消化器の痙攣性疼痛を抑えることもできその治療効果に相加的に作用するという利点がある
ガスモチンは胃腸機能を調節するが セロトニン5−HT4受容体を刺激する作用を持っている オピアト作動薬であるセレキノンやガナトン
:DA拮抗薬慢性胃炎による 悪心・嘔吐に汎用される
中枢・末梢性制吐薬としては以上に挙げた5−HT作用、D2blocker作用、消化器への直接の作用などを併せ持つ薬剤が挙げられる プリンペラン、ナウゼリンはその汎用度は高い それはD2blckerによる消化管の促進作用と、chemoreceptor trigger zone(CTZ)の抑制作用両方を併せ持っていることが大きい そのため中枢性嘔吐や反射性嘔吐どちらにも治療効果を示すSide effectsは錐体外路症状に注意する他、悪性症候群などに対しての注意も必要である
鎮暈薬;その症状の特徴に合わせ脳循環改善薬、代謝改善薬、交感神経刺激薬、向精神薬、抗ヒスタミン薬を使い分けて対処する
回転性めまいの急性期には、メイロン、低分子デキストランL、トラベルミン、プリンペラン、抗不安薬が有効であり、
慢性期にはメリスロン、セファドール、イソメニール、イソバイド、抗不安薬、ビタミン製剤が有効である
以下各薬剤添付文書