甲状腺疾患治療薬

病態

甲状腺疾患は20〜40歳代の女性に好発し、6人に1人の割合でみられる疾患である 
甲状腺機能亢進、甲状腺機能低下などを引き起こす原因として
炎症や自己免疫、腫瘍その他が考えられる 
甲状腺は多くの働きを担っている 

というのも殆どの臓器に甲状腺のホルモンの受容体が存在し
その影響を受けているからである 
甲状腺ホルモンの低下、過剰分泌は各臓器の異常症状となって現れる 
それは以下に示される症状である
 
いろいろな原因で甲状腺の分泌が増えて(血液中の甲状腺ホルモン過多)で
体の新陳代謝の過剰亢進が起こっている状態である

甲状腺機能亢進の場合、暑がり、発汗多過、動悸、息切れ、食欲亢進、体重減少、
下痢、不眠、易刺激性、などを認める
 
逆に甲状腺の働きが衰えて、新陳代謝の低下が起こり
血液中の甲状腺ホルモンが少なくなる疾患である甲状腺機能低下の場合、
寒がり、皮膚粗造、嗄声、体重増加、便秘、嗜眠、精神活動低下といった症状が現れる 

甲状腺の機能の状態を見るには甲状腺ホルモンT3やT4、
TSH:甲状腺刺激ホルモンの値が指標となる 

甲状腺ホルモンにはトリヨードサイロニンT3と、
サイロキシンT4が存在し

血中に遊離したこの2つの値を見ることで甲状腺に
異常があるかどうかを知ることができる 

TSHは脳下垂体から分泌される甲状腺ホルモン:T3T4の生産を調整する甲状腺刺激ホルモンである 

血中の甲状腺ホルモンが低くなると正のフィードバックがかかりTSHは増加する 

それと反対にT3T4が低くなるとTSHは増加し 

逆に負のフィードバックがかかりTSHは減少する 
この様に一定の恒常性(ホメオスタシス)をもって甲状腺ホルモンは常に一定になるように
コントロールされている 

しかし甲状腺に異常が見られるとこの調節が正常に働かなくなり 
甲状腺ホルモン量の過多や低下を引き起こす 

血中遊離体であるfreeT3,freeT4が高くTSHが低ければ
甲状腺機能亢進が疑われ、freeT3、freeT4が少なくTSHが高ければ
甲状腺機能低下が疑われる 

通常、甲状腺機能に異常があるかどうかの血液診断の指標として
freeT3 freeT4そしてTSHが指標となる 

各ホルモンの基準値は以下の通り

各ホルモンの基準値

項目 基準値 測定法
甲状腺刺激ホルモン:TSH 0.6〜4.9μU/ml
0.34〜3.5μU/ml
IRMA シオノギ
IRMA ダイナポット
下垂体から分泌されて甲状腺機能を調節しており血中の変動は甲状腺機能を反映する
遊離トリヨードサイロニン:F-T3 2.4〜4.3pg/ml
3.8〜6.1pg/ml
RIA オーソ
EIA ベーリンガー
トリヨードサイロニンのホルモン活性を有する分画であり、全T3の約0.3%にあたる
遊離サイロキシン:F-T4 0.9〜1.8ng/dl
0.9〜1.9ng/dl

RIA オーソ
EIA ベーリンガー
サイロキシンの中でホルモン活性を有するもので総T4の0.003%程度であるとされているサイロキシン結合蛋白の影響を受けずに甲状腺機能を反映する

検査値は医療機関によって測定法が異なるためその単位や数値は異なってきます
 
検査値ナビも参照して下さい

薬物治療

甲状腺機能低下:
乾燥甲状腺:チラージン、チオレイドやレボフロキシンナトリウム(T4)水和物、チラージンS、
リオチロナミンナトリウム(T3)、チロナミン、を使用する

適応は甲状腺機能低下症や粘液水腫など、
甲状腺の機能亢進による基礎代謝の上昇を目的として用いる

甲状腺機能低下:プロピルチオウラシル:チウラジール、プロパジールやチアマゾール、
メルカゾールなどを用いる 

適応はいずれも甲状腺機能低下症であり、
甲状腺のT4のヨード化の抑制やペルオキシダーゼを阻害するなどの作用によって
その効果を発現する

以下各薬剤添付文書数


チラーヂン S

チロナミン

チウラジール

プロパジール

メルカゾール5

メルカゾール注10

ヨウ化カリウム「日医工」

ヨウ化ナトリウム

ヨウレチン

アドステロール ーI131





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