抗不安薬、睡眠薬
古典的な抗不安薬はエタノールとされている その後1903年に最初のバルビツール酸系の薬剤としてバルビタールbarbitalが用いられた 1912年にはフェノバルビタールphenobarbitalが使用され始め その効果にならって2500種ものバルビツール酸が合成された(製品化されたのは50種)昔の睡眠薬や抗不安薬の中核をなしていたものであるがこの系の薬剤は安全血中濃度域が狭く中毒症状を起こすこともあった このため睡眠薬、抗不安薬の服薬の危険性のイメージが形成されたと言える その後メフェネシンmephenesineを母型として作用時間が長く、筋弛緩作用の強いメプロバメートmeprobamateが1955年に開発された 現在、抗不安薬、睡眠薬の中核を占めているのはBZ(benzodiazepine)系と呼ばれる薬剤である 1957年にLeo Henryk Sternbachが世界初のベンゾジアゼピンであるクロルジアゼポキシド
chlordiazepoxideを合成したのが始まりである 1930年Sternbachはポーランドの大学で研究していたがその研究の中で1955年にRo-5-0690とナンバリングされた薬物の合成を行った しかし大した効果は見込めないと考え棚の上に放置していた それから2年後の1957年5月になって 殆ど期待はしていなかったが、その埃をかぶっていた化合物を念のために薬理実験に回した 動物実験の結果では1955年に抗不安薬として既に導入されていたメプロバメートmeprobamateと同様もしくはそれを超える、催眠作用、鎮静作用、抗ストリキニン作用を持つことが判明した またネコを用いた薬理実験では筋弛緩作用はメプロバメートmeprobamateより2倍の効果を示し、屈筋反射の抑制においては10倍の効果を示した その後人を対象とした治験において投与量が見直されその後世界中で使用されることとなった 日本では1961年に発売された あらゆる薬物の中で最も多く処方される薬剤で会った時期もある これがベンゾジアゼピンの誕生である それまでのバルビツール酸系の抗不安薬、睡眠薬と大きく異なり安全血中濃度域は極めて広い 大量服用による中毒を起こしても死に至るケースは大きく軽減されたと言ってもいいだろう またアネキセートなどの急性中毒時に対応する薬剤も存在する
BZD系の抗不安薬の薬理作用は以下の様に説明される γ-アミノ酪酸(GABA)は中枢神経における伝達物質である GABA受容体にはA、B、Cの3種のサブタイプが存在する 抗不安作用に関連するのはGABA−Aのみ GABA−A受容体はシナプスの後に存在しGABAの結合によってCl-イオンが神経細胞内に流入抑制性シナプス後電位が発生し興奮性の低下へと繋がる
ベンゾジアゼピン系(チエノジゼピン)系抗不安薬(短時間型)
クロチアゼパム:リーゼ 適応:心身症の不安・緊張・抑うつ、睡眠障害、自律神経失調症のめまい、肩こり、食欲不振、麻酔前投与
エチゾラム:デパス 適応:神経症・うつ病・心身症の不安・緊張・抑うつ・睡眠障害など、頚椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛の不安・緊張・抑うつ・筋緊張・統合失調症の睡眠障害など
フルタゾラム:コレミナール 適応:心身症の不安・緊張・抑うつ
ベンゾジアゼピン系系抗不安薬(中間型)
アルプラゾラム:コンスタン、ソラナックス 適応:心身症の身体症状・不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
ロラゼパム:ワイパックス 適応:神経症・心身症の不安・緊張・抑うつ、心身症の身体症状
ブロマゼパム:レキソタン、セニラン 適応:(内服)神経症の不安・緊張・抑うつ・強迫・恐怖、うつ病の不安・緊張、心身症の身体症候・不安・緊張・抑うつ・睡眠障害、麻酔前投与(坐剤)麻酔前投与
ベンゾジアゼピン系系抗不安薬(長時間型)
クロルジアゼポキシド:コンントール、バランス 適応:神経症・うつ病・心身症の不安・緊張・抑うつ
オキサゾラム:セレナール 適応:神経症・心身症の不安・緊張・抑うつなど、麻酔前投与
メダゼパム:レスミット 適応:神経症・心身症の不安・緊張・抑うつ
ジアゼパム:セルシン、ホリゾン、ソナコン 適応:(内服)神経症、うつ病、心身症(更年期障害、消化器疾患、循環器疾患、自律神経障害、腰痛症、頸肩腕症候群)の不安・緊張・抑うつ、脳脊髄疾患に伴う痙攣・疼痛の筋緊張軽減、麻酔前投与(注射)神経症の不安・緊張・抑うつ、麻酔前、麻酔導入時、麻酔中、術後、アルコール依存症の禁断症状、分娩時の不安・興奮・抑うつ軽減、てんかん様重積状態(ホリゾン)、有機リン中毒・カーバメート中毒の痙攣抑制
クロキサゾラム:セパゾン 適応:神経症・心身症(更年期障害など)の不安・緊張・抑うつなど、術前の不安除去
フルジアゼパム:エリスパン 適応:心身症の身体症候、不安・緊張・抑うつ・焦燥、易疲労性、睡眠障害
クロラゼプ酸二カリウム:メンドン 適応:神経症の不安・緊張・抑うつ
メキサゾラム:メレックス 適応:神経症・心身症の不安・緊張・抑うつ、易疲労性、睡眠障害など
ベンゾジアゼピン系系抗不安薬(超長時間型)
プラゼパム:セダプラン 適応:神経症・うつ病・心身症の身体症候・不安・緊張・抑うつ、睡眠障害、麻酔前投与
ロフラゼプ酸エチル:メイラックス 適応:心身症・神経症の不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
フルトプラゼパム:レスタス 適応:神経症・心身症の不安・緊張・抑うつ・易疲労感・睡眠障害
抗不安薬の作用時間と作用強度
薬剤名 | 作用時間 | 作用強度 |
トフィゾパム(グランダキシン) | 短 | 弱 |
クロチアゼム(リーゼ) | ↑ | 弱 |
エチゾラム(デパス) | 中 | |
アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン) | 中 | |
ロラゼパム(ワイパックス) | 強 | |
ブロマゼパム(レキソタン、セラニン) | 強 | |
オキサゾラム(セレナール) | 弱 | |
メダゼパム(レスミット) | 弱 | |
クロルジアゼポキド(バランス、コントール) | 弱 | |
フルジアゼパム(エリスパン) | 中 | |
メキサゾラム(メレックス) | 中 | |
クロキサゾラム(セパゾン) | 強 | |
ジアゼパム(セルシン、ホリゾン) | 中 | |
クロナゼパム(リボトリール、ランドセン) | 強 | |
ロフラゼプ酸エチル(メイラックス) | ↓ | 中 |
フルトプラゼパム(レスタス) | 長 | 強 |
バルビツール酸系睡眠薬
バルビタール:バルビタール 適応:不眠症、不安緊張症状態の鎮静
セコバルビタールナトリウム:アイオナール・ナトリウム 適応:不眠症、麻酔前投与、全身麻酔の導入、不安・緊張状態の鎮静
ペントバルビタールカルシウム:ラボナ 適応:不眠症、麻酔前投与、不安、緊張状態の鎮静、持続睡眠療法における睡眠調節
ペントバルビタールナトリウム:ネンブタール 適応:麻酔前投与、全身麻酔の導入、不安緊張状態の鎮静、不眠症、痙攣状態抑制
アモバルビタール:イソミタール 適応:不眠症、不安緊張状態の鎮静
フェノバルビタール:フェノバール 適応:てんかんの痙攣発作、不安・緊張状態の鎮静、自律神経発作、精神運動発作、(内服のみ)不眠症
フェノバルビタールナトリウム:ワコバルビタール、ルビアール 適応:小児の催眠、不安・緊張状態の鎮静、熱性痙攣、てんかん
ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)
トリアゾラム:ハルシオン 適応:不眠症、麻酔前投与
ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)
ブロチゾラム:レンドルミン、レンドルミンD 適応:不眠症、麻酔前投与
ロルメタゼパム:ロラメット、エバミール 適応:不眠症
リルマザホン塩酸塩水和物:リスミー 適応:不眠症、麻酔前投与
ベンゾジアゼピン系睡眠薬(中間型)
フルニトラゼパム:サイレース、ロヒプノール 適応:(内服)不眠症、麻酔前投薬(注射)全身麻酔の導入、局所麻酔時の鎮静
ニメタゼパム:エリミン 適応:不眠症
エスタゾラム:ユーロジン 適応:不眠症、麻酔前投与
ニトラゼパム:ベンザリン、ネルボン 適応:不眠症、麻酔前投薬、異型小発作群、焦点性発作
ベンゾジアゼピン系睡眠薬(長時間型)
フルラゼパム塩酸塩:ベノジール、ダルメート 適応:不眠症、麻酔前投薬
ハロキサゾラム:ソメリン 適応:不眠症
クアゼパム:ドラール 適応:不眠症、麻酔前投薬
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)
ゾピクロン:アモバン 適応:不眠症、麻酔前投薬
ゾルピデム酒石酸塩:マイスリー 適応:不眠症(統合失調症・躁うつ病の不眠症除く)
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)
トリクロホスナトリウム:トリクロリール 適応:不眠症、心電図および脳波検査などにおける睡眠
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(中間型)
ブロモバレリル尿素:ブロバリン 適応:不眠症、鎮静
抱水クロラール:抱水クロラール、エスクレ 適応:(内服)不眠症(注射用・坐剤)理学的検査時における鎮静・催眠、静注が困難な痙攣重積状態
睡眠剤の作用時間
薬剤名 | 作用時間 |
ゾルピデム(マイスリー) | 超短時間(2〜4) |
トリアゾラム(ハルシオン) | ↓ |
ゾピクロン(アモバン) | |
エチゾラム(デパス) | 短時間(6〜10) |
ブロチゾラム(レンドルミン) | ↓ |
リルマザホン(リスミー) | |
ロルメタゼパム(ロラメット、エバミール) | |
エスタゾラム(ユーロジン) | 中間(12〜24) |
フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール) | ↓ |
ニトラゼパム(ネルボン、ベンザリン) | |
クアゼパム(ドラール) | 長時間 |
フルラゼパム(ダルメート、ベノジール) | ↓ |
その他
タンドスピロンクエン酸塩:セディール 適応:心身症の身体症状・抑うつ・不安・焦燥・睡眠障害、神経症の抑うつ、恐怖
パッシフローラエキス:パシフラミン 適応:神経症・心身症の不安・緊張・抑うつ・睡眠障害、神経症の焦燥
臭化カルシウム:ブロカル 適応:不安緊張状態の鎮静、小児の難治性てんかん
14日分を限度とする医薬品
第2種向精神薬
アモバルビタール、塩酸ペンタゾシン、ブプレノルフィン(貼布剤)、ブプレノルフィン塩酸塩(座薬)、ペントバルビタールカルシウム
第3種向精神薬
クロラゼブ酸2カリウム、ジアゼパム(坐剤)、フェノバルビタールナトリウム(坐剤)、ブロマゼパム(坐剤)、マジンドール
30日分を限度とする医薬品
第1種向精神薬
モダフィニル、メチルフェニデート塩酸塩
第2種向精神薬
ブプレノルフィン塩酸塩(注射薬)、フルニトラゼパム
第3種向精神薬
アルプラゾラム、エスタゾラム、エチゾラム、オキサゾラム、クアゼパム、クロキサゾラム、クロキサゾラム、クロチアゼパム、クロルジアゼポキシド、ゾピクロン、ゾルピデム酒石酸塩、トリアゾラム、ハロキサゾラム、プロキシフィリン、エフェドリン塩酸塩・フェノバルビタール配合剤、フルジアゼパム、フルラゼパム塩酸塩、ブロチゾラム、ブロマゼパム、ペモリン、メタゼパム、メペンゾラート臭化物・フェノバルビタール配合剤、ロフラゼブ酸エチル、ロラゼパム、ロルメタゼパム
90日分を限度とする医薬品
第3種向精神薬
クロナゼパム、クロバザム、ジアゼパム、ニトラゼパム、フェノバルビタール、フェノバルビタール・フェニトイン配合剤、フェノバルビタール・フェニトイン・安息香酸ナトリウムカフェイン配合剤
以下各薬剤添付文書