腸疾患治療薬
病態
以下の表に示す疾患が主である
下痢をきたす疾患
急性の下痢 | 腸管感染症 抗生物質性下痢 腸管外感染症 非感染性下痢 中毒 薬剤 重金属 |
慢性の下痢 | 腸由来 慢性感染症 機能性下痢 胃由来 薬剤性 全身性疾患 膵疾患 |
治療薬
治療薬としては、腸運動の抑制薬、収斂薬、吸着薬、殺菌薬、乳酸菌(整腸剤)製剤、乳糖分解酵素薬、漢方、アヘンアルカロイド、炎症性腸疾患治療薬、過敏性腸症候群治療薬などがありいずれも下痢症状の緩和を目的としている
腸運動抑制薬
麻薬性、非麻薬性物質が作用する受容体にはオピオイド受容体があるが、(数種のサブタイプ:μやκ受容体がある)オピオイド受容体のμ2受容体は腸の蠕動運動抑制作用を持つ
汎用薬ロペラミド(商品名:ロペミン)は非麻薬性の合成アヘン様化合物であり、オピオイド受容体に作用し腸管の蠕動運動や分泌を抑制する
上述したように汎用されているが使用の際に使用禁忌である 偽膜性大腸炎の有無を確認することが必要不可欠である また一般的に細菌性の下痢には使わない 他にオピオイド受容体に作用し腸管の蠕動運動の抑制作用を持つ薬剤としてトリメプチン(商品名:セレキノン)があり、過敏性大腸炎にも使用される 自律神経系の副交感神経は優位になると腸の蠕動運動は促進される
そういった点から 副交感神経に拮抗する薬剤(一般的に抗Ach薬:消化性潰瘍治療薬の項を参照 と呼ばれる)は結果として腸管の蠕動運動を抑え下痢を抑える
そのため特に下部腸管のAch受容体への作用が強いメペンゾラート(商品名:トランコロン)などが用いられる
Achを抑えると症状の悪化を来す緑内障、前立腺肥大、重症筋無力症に対しては当然の如く使用は避ける
収斂薬
収斂作用とは腸管粘膜などのタンパク質を変性させ止瀉作用においての主作用は組織、血管を縮める作用であり その結果炎症、腸管蠕動運動抑制、を示し止瀉作用をもたらす タンニン酸アルブミン(商品名:タンナルビン)がこの作用を持つが、経口投与後、腸管内の消化液によって分解を受け、タンニン酸アルブミンからタンニン酸となる タンニン酸には比較的、暖徐所な収斂作用を持っている また鉄剤との相互作用がある 鉄と結合し、タンニン酸鉄となる ため併用は禁忌となっている タンニン酸はアルブミンを含むため牛乳アレルギーの既往のある患者にも細心の注意を払うべきである ビスマス製剤については収斂薬に比べると汎用はされていないが長期間連用時のZnの蓄積には注意を払うべきである
消化管用吸着剤
細菌、毒物などによって産生されるガス、粘液などの有害物質を吸着し、有害物質が腸管から吸収されるのを防ぎ、下痢を抑える 天然ケイ酸アルミニウムであるアドソルビンは細菌性毒素の吸着し腸管を保護する作用を持つ 腐敗性、発酵性の下痢にも用いられる この薬剤は用法上の特徴として食前、食間の服用となっている 食物の成分を吸着するためである
殺菌薬
ニューキノロン系抗菌薬、ホスホマイシン系抗菌薬とともに用いられる 腸管内の殺菌作用を示す Side effectsは殆どなく安全に使用できる薬剤である
乳酸菌(整腸)製剤
通常、腸管内には無数の細菌がぞんざいしその均衡がとれているからこそ腸の作用は正常に機能しているしかしその均衡が崩れると腸機能の異常を起こす つまり有害細菌が存在してもそのバランスがとれていれば病原性を発揮しないしかし、バランスが崩れると腸内に有害菌が増殖し有害物質を産生し下痢、便秘を引き起こす 腸内細菌のバランスを整え下痢、便秘などを改善する
乳酸菌の働きにより発生する乳酸により腸内を酸性に傾け 病原性大腸菌を阻止、腐敗発行物であるアンモニアの産生、吸収も抑制する また抗菌薬使用時に整腸剤を合わせて使用する例が多いがこれは菌交代症の為であり 抗菌薬を使用すると正常細菌の減少や通常では少数しか存在しない菌が異常増殖する それによって正常細菌叢が乱れる その現象を菌交代症と呼ばれ、多種の抗菌薬に耐性を持つ整腸剤が抗菌薬による腸内細菌のバランス異常を防ぐ目的で合わせて使われる
乳糖分解酵素薬
乳製品にはガラクトースという成分が含まれておりこの成分は体内のβ−ガラクトシダーゼという酵素によって分解・消化される しかし先天的にこの酵素を追っていない場合消化不良や下痢を生じる乳糖不耐性とがラクトース血症は異なり、同じ乳製品によって症状は起こるががラクトース血症の方が病状は深刻である 治療薬には酵素を補う目的でβ−ガラクトシダーゼ(商品名:ガランターゼ)やチラクターゼ(ミルラクト)がある
消化管ガス駆除薬
薬剤が持つ愛麺活性作用によって消化管内のガスを破裂させたり、流動性を高めて除去する 代表的な薬剤としてはジメチコン(商品名:ガスコン)がある
炎症性腸疾患治療薬
潰瘍性大腸炎、クローン病がある
潰瘍性大腸炎においてサラゾスルファピリジン(SASP:サラゾピリン)メサラジン(5−SA:ペンタサ)が主治療薬となる 併用して使用するステロイドは漫然を使用すべきではない)
過敏性腸症候群治療薬
食生活や腸の運動を担う自律神経系(副交感神経)の異常やストレスなどの心因的なものが原因となる
治療薬としてはメペンゾラート臭化物(商品名:トランコロン)、ポリカルボフィルカルシウム(商品名:コロネル)などが汎用される
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以下各薬剤添付文書