初期経験の種類とその影響
幼少時の経験がその後のその人のパーソナリティーに影響を及ぼすであろうとした この様にパーソナリティー形成の要因を幼少時の経験に的を絞り研究を行った例としてフロイトやローレンツの例がある フロイト、S
Freud,Sigmund (1856-1939)の発達理論ではこどもは5〜6歳までの間にいくつかの発達段階を経験して成長しこの間にパーソナリティーの基礎が作られるものと考えた その発達段階は口唇期、肛門期、男根期に分類されている 口唇期・・生後1年位 肛門期・・生後2年目から3,4歳の時期 男根期・・3,4歳から5,6歳の時期である フロイト、S
Freud,Sigmundの発達理論は親子関係を重要視し、また人間形成に与える初期からの人との関わりを重要視した この事は後の親子関係に及ぼす影響、パーソナリティー発達に大きな影響を与えると考えられるもとになった 実際にフロイトはその治療実践に基づく臨床経験を基本とする臨床法の個別研究の中で幼少期の外傷体験がその後のパーソナリティー形成に悪影響を及ぼすことも明らかにした またエソロジーの項で述べた刻印づけimprintingも臨界期が存在し、それが生まれて間もない頃であるという点 imprintingによって自分より大きな動くものに対して追従関係を形成するという点からその初期研究の重要性が解る 初期研究で重要視されている点は2点でいつの時期がその特有な性質を形成する時期であるのか (例えば フロイト、S
Freud,Sigmundの例では5,6歳までであったし、ローレンツのimprintingの例では生後かなり早い時期であった) またそれによってどんな反応が生じるのか(フロイト、S
Freud,Sigmundの例では後のパーソナリティーや親子の関係に影響を与える事、ローレンツのimprintingの例では追従関係の形成である事)に重点が置かれている 他の心理学の近年の研究では時期は一般的に受胎から出生までとされており、その後の影響としては学習、情動反応、統制力、脳の発達があげられる またその時期の知覚の遮断はその後の知覚の能力の形成に悪影響を与えるとされている
マターナルデプリベーションとホスピタリズムとは マターナルデプリベーションmaternal deprivationはボウルビー、J.M Bowlby,johnson Mostynによって提唱されたもので母子関係を人格形成の核としそれが後の健全なパーソナリティー形成や、知能、身体の発達には不可欠とした ホスプタリズムとはスピッツ、R.A
Spitz Rene Arpad(1887〜1974)によって示されたもので戦時中の孤児を集めた病院で無関心、発声の少なさ食欲不振などの異常が見られたことから母子関係の欠如がそのような症状を引きおこしたと考えこれをホスピタリズムと呼んだ ホスピタリズムはそのような乳児の状態をいうがスピッツ、R.A
Spitz Rene Arpadはまたアナクリティックデプレッションanaclitic depression(ホスピタリズムと異なり、母子関係が少なくとも6ヶ月はあったという点が異なる)症状も発見した
愛着 attachment ボウルビー、J.M Bowlby,johnson Mostynによって提唱されたマターナルデプリベーションは後のパーソンリティ―形成に影響を与えるとしたが また母子関係の中での愛着(母との間に築かれる情緒的な強い結び付き)も重要であるとした 当初これは養育してくれる、食物を与えてくれる人と強く形成されると考えられていたがそうではない事が最近の研究で明らかになってきている またこの愛着行動は人だけに限らず他の哺乳類にも共通して見られることが分かっている
以下ハーロウ、H.F Harlow,Harry,Frederick(1905〜1981)のサルを使った愛着に関する研究について人以外の哺乳類でも愛着行動を示す事について触れる ハーロウ、H.F
Harlow,Harry,Frederickは親から隔離されたサルを実験に用い片方の親に見立てた模型を針金で作り、他方の母親に見立てた母親は模型の上に布製の柔らかいものをかぶせた そしてどちらの模型からも授乳が出来るようにした 結果はどちらの母親から授乳されようが布製の母親のもとに滞在している時間がはるかに長かった この事から栄養を与えてくれるかどうかには関わらずサルは「心地よい接触」を求める事が解った
愛着attachmentについては上述したとおりであるがそれには固有の発達段階がある事が解っている生後しばらくの段階(第一段階:8〜12週まで)愛着行動は親だけに限らず色々な人に向けられる、第二段階:〜6ヶ月頃まではその対象が1人(多くは母親)か少人数といった限られた人物に絞られてくる 第三段階(2,3歳頃まで)は人見知りが始まり愛着行動を示す対象はますます限られていく
*段階分けはボウルビー、J.M Bowlby,johnson Mostynによってさらに詳しく分類されています
ストレンジシチュエーション法 strange situation procedure ボウルビー、J.M Bowlby,johnson Mostynの愛着理論に基づきエインズワーズ、M.D.Sによって行われた実験 実験プロトコルは以下の通り @実験者、母親、こどもが入室する30秒間して実験者は退出A母親、こどもともに実験室にいる3分間Bストレンジャー:見知らぬ人が入室3分過ごすC母親が退室、3分おくD母親が再び入室、ストレンジャーは退室 3分おくE母親も退室 3分おくFストレンジャーが入室こどもを慰める 3分 G母親が入室後、ストレンジャーは退室 3分
この結果によってAタイプ、Bタイプ、Cタイプに分けられる Aタイプ:回避型 母親がいる以内に関わらず遊び続ける、途中で母親が摂食しようとすると逆に回避する場合がある Bタイプ:安定型 親がいなくなると寂しがる 母親が戻ると喜ぶ また親を拠点として周りの状況を把握する Cタイプ:アンビバレント型、抵抗型 母親がいなくなると寂しがるが戻ってくるとたたいたりして怒っているように見える このタイプ分けから 一般的にB型は健全な発達をしているしかしCタイプは愛着が健全にできていないと考えられる 文化差に基づく比率の差は見られるが日本においては、Bタイプが一番多く、次にCタイプ次にAタイプと言われている
内的ワーキングモデル internal working model 親との養育関係 ごく発達初期に形成される認知的枠組み 後の個人の自身に対する認知、他者に対する認知パターンなどに影響を与える
親の養育態度とこどもの性格形成の関連性について サイモンズにより提唱された親の養育関係とこどもの性格に関するモデルがある それは親の養育態度を2つの軸で現わしそれから形成される4つの養育パターンによってこどもの性格がどうなるかを示したものである 親の養育態度とは拒否―受容、支配ー服従から形成される その結果形成されるこどもの性格は親の養育態度の型別に見ると残忍型の場合子供の性格としては逃避型、情緒不安定、神経質となり、無視型の場合、攻撃的、甘やかし型の場合、独立的、反抗的、自己中心的、かまい過ぎの場合、幼児的、依存的となると考えられている