心理療法を考えるうえで、外せないのがやはりフロイトです。
フロイトは精神力動論を提唱しました。
フロイトの精神力動論のモデルは無意識、自我、超自我からなりたちますが無意識にある事がらへの抑圧が病理をもたらしていると考え、催眠を利用し治療を行いました。これが精神分析療法です。その後フロイトは催眠による療法をやめ自由連想法にとりくみます。自由連想法とは思いついたままでのことを言語化し表出させるものでこれによって抑圧を低減しようとするものです。
心理療法としては他に学習理論を背景とした行動療法があります。病理の原因を誤った条件づけによる学習から生じたものとし、行動療法においては誤った条件づけを消去する事で病理を解決しようとするものです。
たとえば何かを恐れていたとします。しかしそれは本来恐れるものではない時、対象とするものに対して接し、その結果何も起こらないことを学習させます。簡略化していますがこれが大まかな学習理論に基づいた行動療法です。
また近年でも有用とされている認知療法は外的におこっている物事そのものよりもその物事のとらえ方が病理を引き起こすとしています。それを認知のゆがみとしました。認知のゆがみには以下のようなものがあります。
1、恣意的推論
2、選択的注目
3、過度の一般化
4、拡大解釈と過小評価
5、個人化
6、完全主義的思考
1、はある物事に対し根拠のないネガティブな結論を引き出す捉えかたのことです。
2、日常生活している中において良い面も悪い面もあるはずなのに悪い側面に特に注視しそれを重要視することです。
3、少しネガティブな事がおこるとそれを拡大し全般的にネガティブであるととらえることです。
4、自らの欠点の拡大解釈と長所の過小評価です。
5、自分とは関係のないよくない出来事をあたかも自分と関係あることのようにとらえる事です。
6、あいまいさを許さない事です。
こういった認知のパターンは少なからず苦しみをうみ抑うつ気分をひきおこす可能性が大いにあります。こういった物事のとらえ方を認知のゆがみとしそれを修正することでネガティブな感情の発生を低減させ抑うつ状態を回避しようというものです。
認知のゆがみを修正する具体的な方法としては、コラム法があります。
コラム法
否定的な感情の思考経路を自分で書き出します。
例:Aという人物が私を嫌っている。
それが上記の1〜6の認知のゆがみのどれにあてはまるか記入します。
例では1、恣意的推論(根拠のないネガティブな結論)に該当するとします。
最後に合理的思考(Aという人物が私を嫌っているかよくよく考えるとはっきりした根拠がない。)に修正します。
最近では認知療法として有用であり否定→肯定へと感情を修正する事ができます。これを繰り返しているうちにものごとのとらえ方のクセ、認知のクセが修正され外的物事を過度にネガティブにとらえる事が少なくなり結果、抑うつ状態に陥り苦慮する事が少なくなります。対人関係の改善、気分の改善などその効果は大きいといえます。簡易的なので自分で日記のように、日々の出来事をいやなことがあったとき、自分がどんな捉え方をしているかを見つめなおしそ認知を正しくこともできます。
クライアント中心療法
どの心理療法を用いても解決されるまでにはかかせないものがあります。
1、治療者と患者の間における感情移入、2、ラポールと呼ばれる信頼関係がある、3、患者が話したい事を治療者に話せる、4、患者が治療者の理解を感じる事 などです。
ロジャースはクライアント中心療法を導きましたがその基本的姿勢はは3つです。
1、カウンセラーがクライアントに正直である(純粋性の一致)2、クライアントに対し無条件の肯定を行う(肯定)3、クライアントに対し共感的理解をする(共感)
カウンセリング初期は自己概念を限定し他者との交流を恐れていたクライアントも自己概念が柔軟になり自分に対する認知が変化し日常行動も変化し行動の変容につながります。さらには体験の仕方が柔軟性と流動性にみち創造的な生活へ向かいロジャースの定義する自己実現へとむかいます。
カウンセリングの効果
人の心をはかるのはむずかしいがゆえにカウンセリングの効果は特に日本に於いてはあまり広く知られていません。しかし昨今、心の問題が様々なところでさけばれ、また人の関心を惹いていることは確かであり一般的な書籍、テレビなどのメディアでもたびたびみかけるようになりました。
その効果は客観性をもったメタ分析によって明らかになっています。
現在、認知療法や行動療法が不安、抑うつの低減に及ぼす効果は科学的にも立証されています。