第3章  心の発達


犬や猫、馬などは、生まれてきて1日、2日で立って歩くようになります。

馬は特に完成度が高く出生直後から親と同じように歩くことができます。

これを離巣性または早成性と呼びます。

それは外的から身を守るためのものでもあったのでしょう。

対し霊長類の赤ちゃんは二次的就巣性と呼ばれ未熟な状態で生まれてきます。

私たち人の赤ちゃんは生まれてから歩きだすまで1年程はかかりますしかし、成人してからの人は哺乳類の中でも頭脳の点では明らかに他の主と異なっています。

なぜでしょう?

その答えは母親のからだのつくりとその関係があります。イギリスの経験論者達は未熟な状態で生まれてくる赤ちゃんの心理状態を白紙同然「タブラ・ラサ」であるとしています。

その後の新生児の研究により赤ちゃんの音声刺激に対する反応や選好注視の研究によりパターンのある複雑な刺激に対して選択的に反応する事がわかってきました。

そういった研究の中から発達心理学者のバウアーは赤ちゃんの中に「随伴関係の検出」能力を見出しました。「随伴関係の検出」能力とはこうすればこうなるという関係性の検出です。


生後の発達を経時的にみると、


1歳、言語的理解表現が発達。2歳〜3歳、さらに言語的な発達は目覚ましくなる。高次の文法表現が可能になります。対して記憶の発達は遅いと言われています。私たちは小さいころの記憶いつ頃からあるでしょうか?おそらく幼稚園の時ぐらいからうっすらとあるのではないでしょうか?

4歳頃・・過去の出来事を記憶できるようになる。という事が見出されています。

生後8〜12週まで養育者との間に形成されるのは「愛着」という緊密な情緒的結びつきです。

乳幼児が養育者に対して泣いたり、ほほえんだり、するのはこの行動によって養育者との関係性を築きます。

「愛着」に関しての研究はエインワーズのストレンジシチュエーション方があり、それによって「愛着」には個人差、文化差が存在し3パターンの愛着」があるとされました。


1つ目のパターンは回避型、2つ目のパターンは安定型、3つ目のパターンは抵抗型とされています。

6か月までには人見知りがはじまり、10か月を過ぎると愛着対象である親の表情や動作を手掛かりに自分の行動を調整し始めます。

対象となるものを親がみてその反応をみて同じような反応をします。この行動は「社会的参照行動」と呼ばれます。1歳をすぎるとものの性質や種類をわける能力である「カテゴリー化」を始めます。

1歳半になると急速な言語の発達をはじめます。

2歳ぐらいには語と語を組み合わせだします。

2歳をすぎると語彙をさらに増加させ2歳半から3歳までに一応正しい言葉をしゃべれるようになります。

実際の事象と言葉が合致するのはそれ以降であり3,4歳のころに実際の事象と発する言葉が合致します。

3,4歳になると他者の心についての理解がはじまります。同じ年頃の他者が何を考えているのかについて理解するようになります。




発達障害とは、

2005年にその支援法が施行され、今特に支援がさけばれている発達障害には

知的障害、

広汎性発達障害(自閉症)、

高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群、高機能自閉症)

学習障害(LD)

注意欠陥性多動性障害(ADHD)などがあります。


知的障害

年齢層の知的能力がなく社会的自立の上で支援が必要とされる。ダウン症など染色体異常によるものもあれば原因が特定できないものも多い。人口の2〜3パーセントが該当する。知的障害者の福祉制度を利用することは可能。


広汎性発達障害(自閉症)

社会性の障害(他者とのやり取りが苦手。他者の意図や感情が読み取りにくい)。

コミュニケーションの障害(言葉の発達が遅れる。オウム返し。会話が一方的で自分の興味関心事だけ話す)。

こだわり行動(興味の偏りと決まりきったパターンへの固執)。

生後3年以内に上記の三つの兆候が同時にある場合自閉症と診断される。自閉症の主たる兆候は幼児期に顕著。人口の1%程度が該当する。半数程度は知的障害を持たない高機能群である。高機能群の場合、知的障害者の福祉制度の対象とはならない。


高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群、高機能自閉症)

知的には標準またそれ以上。自閉症と同じ幼児期兆候を持つが、発達するにつれて症状が目立たなくなる。しかし中核症状である社会性の障害は軽くはなく社会的自立において大きな問題を持つ。特にコミュニケーションの障害はあっても言葉の発達が遅れなかった場合アスペルガー症候群と呼ぶが高機能自閉症と区別することは臨床的には意味がない


学習障害(LD)

知的には標準またそれ以上。学習の著しい偏り(読み書き計算などの一部だけができない)。注意集中力や落ち着きがない場合もありまた不器用な場合もある。人口の5%が該当するというデータもある。知的障害者の福祉制度の対象とはならない


注意欠陥性多動性障害(ADHD)

注意集中が難しい.多動落ち着きがない.衝動的思いついたら行動に移してしまう.

上記の三つが同時にある場合に診断される。発達的な個性の場合だけではなく環境条件が悪い場合にも同様の状態像を見せる。薬物療法が著効する場合もある。人口の3%程度が該当する。知的障害者の福祉制度の対象とはならない








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