脳は人の器官のなかでも中枢にあたります。そのため脳がになっている機能は高次機能とよばれています。進化の過程においてその高次機能がどのように変化してきたかをみてみると「魚類→両生類→爬虫類→鳥類→哺乳類」という過程で脳は単純な行動を担う器官から進化しとりわけ哺乳類のなかでも霊長類となってから複雑な機能をはたしておりまた心の働きをになっています。
生物化学的な視点でみれば脳はニューロンとよばれる単位の数千億個の神経細胞からなりたっています。ニューロンは樹状突起、軸索、終末部からなりたっています。ニューロンとニューロンには隙間(シナプス間隔があり神経伝達物質を介し信号が伝えられます。ニューロン間の神経伝達がうまくいくとニューロンに活動電位が発生し次のニューロンの末端まで伝わります。
脳では数百の神経伝達物質が存在していると考えられていますが現在その働きなどが明らかになっている神経伝達物質には次の6つがあります。
1、アセチルコリン、
2、ドーパミン、
3、ノルエピネフリン、
4、セロトニン、
5、GABA、
6、グルタミン酸、
ニューロンとニューロンを介するこれらの神経伝達物質のはたらきは複雑ですがおおまかには以下のとおりです。
1、アセチルコリン、は自律神経系の副交感神経促進、平滑筋、骨格筋の収縮と弛緩。
2、ドーパミン、は自律神経の交感神経系の促進。
4、セロトニン、は気持ちをおちつけたりするはたらきをになっています。
5、GABA、には鎮静作用があります。
これら神経伝達は人の情動(心の働き)と強くむすびついておりそのことからこれら神経伝達物質のバランスの不均衡は結果様々な病理(特に精神疾患)の原因となることがわかっています。
具体的には1、メジャートランキライザー、2、マイナートランキライザー、3、SDA、4、MARTA、5、DPA、6、TCA、または四環形、7、SSRI、8、SNRI、9、NaSSA、などがあります。
全ての哺乳類は同じ能の構造を持っていますがその脳の構造を大まかに生物学的分類でとらえると以下のようになります。
1、大脳半球(新皮質、旧皮質・古皮質、大脳基底核)
2、脳幹 (間脳・・視床、視床下部)、
3、中脳、橋、延髄、小脳からなりたっています。
大脳半球はその表面を新皮質で覆われています。
またその中でも系統発生的に古い部分は古皮質と呼ばれます。
またその内部には扁桃体などが存在する大脳辺縁系と呼ばれる部分があり大脳半球と相互に密接に結合しています。
大脳新皮質のはたらき
新皮質では外部の感覚情報を手がかりにそれを分析、統合しその意味を認識しどう適応行動をとるかの為の働きを担っています。
とりわけ前頭前野においては後頭葉の判断にもとづいて適応行動(自己意識、情動のコントロール、思考、自己調節)を組み立て運動前野につたえます。自己意識は自己のモニタリングであり自分自身の意識に気づき例えば「自分はこう考えていると自己の中で自分を客観視する」はたらきです。
そこで出来たイメージを運動機能につなげていきます。
大脳辺縁系のはたらき
大脳辺縁系では主に動機付けや情動を担っています。大脳辺縁系の扁桃体では物事が自分にとって有害かそうでないか、快か不快かといった意味づけを担っています。また大脳辺縁系には海馬や扁桃体が含まれ、人の感情、記憶に重要な役割を果たしています。脳幹は人間の基本的な生命の維持にかかわる部分で呼吸中枢などがあり感情的な面よりも身体的な役割に寄与しています。大脳辺縁系と前頭前野が感情には深く関与していますが前章で述べた動機付け、情動は大脳辺縁系が関与し情動には特に扁桃体が関与しています。
間脳のはたらき
間脳の視床下部は自律神経や内分泌系の働きに関わっており、交感神経系や服交感神経系をとおしてまた体温調節などを通じて恒常性(ホメオスタシス)を維持しています。また視床下部は身体的な反応をつかさどるホルモンの分泌や、リラックス、興奮などの自律神経の働きにも深く関与しています。